モノクロ
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毎日欠かさず行っていることがある。
最初は佐山さんに任命されて始めたことだったけれど、今となっては欠かすことのできない作業だ。
「……うぅ。やっぱり、ちょっとヘコみますね……」
「ん? 悪い意見でも来た?」
「はい、来ちゃいました……」
私の目の前にあるパソコンのディスプレイに映る文字。
それはお客さまからの問い合わせ内容だ。
基本的にはカスタマーサポート部で応対され、その内容は企画部の方にも回ってくる。
内容によっては企画部の方で文面を考え、返答することもある。
商品や意見によってはそれを取り入れることもあるけど、現状を愛してくださる方もいるので慎重に検討を重ねていくんだ。
「“しおりが邪魔。なければいいのに”、だそうです……」
「根本だな」
「ここまではっきりと言われたのは初めてですね……。今まで数回だけ、やんわりと言われたことはありましたけど」
「それでも、売上対意見の数を考えれば、好意的に感じてるユーザーの方が多いとは思うけどな。悪い部分には文句を言いたくなるものだけど、満足している部分に対して意見をしようと動く人は少ないと思うから」
「確かに! 満足すればそのまま使い続けますもんね」
ブックカバーの売れ行きは予想されていた以上に好調のようで。
理想としていたインターネットでの販売やオーダー販売も、今販売しているブックカバーをベースとして、今後は視野に入れていきたいという話も出ているくらいなのだ。
「それでもやっぱり意見はいいものも悪いものも全部受け止めます。いつか、このお客さまにも心から満足してもらえる商品を世に出せるように、精一杯頑張りたいです」
「あぁ。そうだな」
自分が携わったものに対しての意見をもらえることは本当にありがたいこと。
ヘコむことだってあるけれど、感謝の気持ちの方が大きい。