モノクロ
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土曜日の昼下がり、あたたかな太陽の光が差し込む1軒家に私と先輩は訪れていた。
すっきりと片付けられたリビングの真ん中で梢ちゃんとお絵かきをしながら遊んでいるのは私と先輩、そして、その光景をダイニングテーブルに座っておしゃべりをしながら見ているのは佐山さんと若菜さんだ。
「さきこ、それ何だよっ!?」
「えっ、パンパンパンコですよ! ほら、梢ちゃんと同じ絵です!」
「これがパンダ!? どう見ても黒豆大福だろ~! 梢の方が何倍も上手だし! なぁ、梢~」
「うん!」
梢ちゃんはお絵かきに夢中で、先輩の膝の上で足を上下させながら、手に持ったクレヨンを器用に画用紙の上に滑らせていく。
「えぇ~、うまく描けてると思うのになぁ。あれ? 梢ちゃん、誰を描いてるの?」
「これね、しんくんなんだよ!」
「しんくん?」
「うん! こずね、しんくんがだーいすきなのっ」
先輩の膝の上で楽しそうにお絵かきをしていた梢ちゃんが、両手を天に広げて満面の笑みを浮かべてそう叫んだ。
お絵かき大会が繰り広げられていた穏やかな空間に、一瞬にして衝撃が走る。
突然の告白に大人たちは動きを止めてきょとんとしてしまったけど、私はすぐに梢ちゃんの顔を覗き込んで訊ねる。
「ねぇっ、梢ちゃん! 好きな男の子がいるのっ?」
「うんっ! しんくん、すっごくやさしいんだよっ」
「きゃーっ! そうなのっ? そうなのっ?」
「待て、こず……っ! “しんくん”って誰だ? こずはパパが大好きで、パパと結婚するんだよな?」
「待て待て! 梢が好きなのは“はーくん”だろっ? なっ?」
よろよろと近寄って来る佐山さんと、梢ちゃんを自分に向き合うように抱えなおした先輩は、立て続けに梢ちゃんに問い掛ける。