モノクロ
「っていうのは冗談で。この子は会社の後輩の佐々木さん。部署は違うんだけど、面倒見のいい俺が面倒見てやってんの」
「会社の後輩さんなの? あのっ、いつも兄がお世話になってます! こんなおちゃらけた兄でご迷惑お掛けしてすみません!」
「あっ、いえ! 迷惑なんてとんでもないです。たくさんお世話になってますので……って、え? “兄”って……」
「こいつ、俺の妹の友美。前に妹がいるって話したことあったろ? で、こっちが旦那の圭斗とチビの幸太な。つーか、友美、いい加減その変な挨拶の仕方やめろよ。俺は迷惑なんて掛けてないっつの」
「本当のことだもん」
「せ、先輩の妹さんって、こんなにかわいい人だったんですか!? 前に聞いた時の想像と全然違うし、先輩と違ってすごく綺麗じゃないですか!」
「おい、さきこ、さらっと俺のことけなしてねぇ?」
「けなしてはいませんけど、驚いてます!」
「ったく、さきこは。つーか、どんな想像してたんだよ」
苦笑する先輩にぐしゃぐしゃと頭を掻き回されながらも、私は妹さんに釘付けだった。
本当に先輩の周りには綺麗な人だったりかわいい人が多すぎる。
まさか妹さんまでもがこんなにかわいい人だったなんて。
先輩って人だけではなく、綺麗な人を惹きつける力も持っているんだとしみじみと思う。
っていうか……妹さんの名前って、“友美”さん……?
これまたどこかで聞いた覚えが……って、あれ……?
ふっと思い出した場面は、1年くらい前に会社で起こった出来事だった。
……そう。先輩に会いに営業部のオフィスを訪れた時、“けいと”さんから電話が掛かってきた先輩が戸惑っている様子で“ともみ”さんの名前を呼んでいた、あの日のこと……。
先輩の切ない想いを知ったあの日だ。
え、でも、だって……目の前にいる“友美”さんは先輩の妹さんで……。