モノクロ
 
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ある土曜日、私は柚ノ浦アリーナで行われているコミケイベントに来ていた。

部屋に居ても余計なことを考えたり寂しいだけなので、外に繰り出すことにしたのだ。

先輩に「本を読むことに忙しい」なんて言ったけど、本当は違う世界に入り込みたくて本を読もうとしても頭の中に内容が全く入ってきてくれなくて、すっかり本からは遠ざかってしまっている。

部屋にいても家事が終わってしまえば、何をするでもなくぼんやりと過ごす毎日。

そんな中、タイミングよくコミケがあるということを知り、日常と違う環境に行けば気晴らしになるはずだと、コミケが行われている会場に足を運んでいた。

最近はすっかり遠ざかっていたから、こういう場所に来るのはいつぶりだろうか。

ガヤガヤと多くの人で賑わう空間を久しぶりの高揚感に包まれながらウロウロする。

この雰囲気、すごく懐かしく感じるな……。

私がこの世界から遠ざかっている間に新しい流行りに移行しているようだったけど、それでも根強い人気の作品も多々健在のようだ。

パンフレットを見つついろんなスペースで商品を物色しながら歩いていると、斜め前からよく知っている声が飛んできた。


「うっそ! アキ、久しぶりじゃーん!」

「あっ、ショウ! 久しぶり~!」

「アキちゃん、久しぶりね」


ショウに手を振った時、ショウの斜め後ろにいた女の子がひょこっと顔を見せてくれ、ショウよりも懐かしい顔に私のテンションは最高潮に上がる。


「キャー! ランラン、久しぶりっ! ランランってば、またかわいくなったね~! その格好もすごく似合ってるっ」


ランランはゴスロリを思わせる服を着ているけど、変にゴテゴテしたり派手な格好にならないのはランランの着こなしが上手いからだろう。


「ありがとう。アキちゃんもすごく綺麗になってる。驚いちゃった」

「うそっ! ちょっとショウ聞いたっ!? 私綺麗になったんだって! って、いないし!」

「ふふっ」


目の前にいるランランはショウの彼女だ。

しっかりものの彼女は変わらず美少女で、心をほっと落ち着かせてくれる雰囲気を醸し出している。

 
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