モノクロ
 

久しぶりのコミケは楽しくて仕方なかった。

久しぶりに友達にもたくさん会えたし、たくさんおしゃべりもしたし、ランランのおかげで素敵なイラストを描くクリエイターさんにも出逢えた。

会場を出るまでは、満足な気持ちでいっぱいだった。


「はぁ~! 超楽しかったー!」

「うん」


私の横に並んで歩くのはショウとランラン。

駅まで一緒に帰ろうという話になり、3人でおしゃべりをしながら歩いていた。

周りにも同じように帰路につく人たちがちらほらいて。

駅が近くなってきたこともあり辺りは賑わってきているけれど、イベント会場のような賑やかさはなく何だか寂しさを感じてしまう。

寂しさのせいかつい息をつきそうになり、私は慌ててのみこんだ。

どうしてなのかな……。友達もまだ隣にいて楽しいはずなのに、心にぽっかりと穴が空いたように感じるのは。

前はこんなことはなかった。

手に入れた便箋やポストカード、同人誌を早く家に帰って眺めたくて仕方なくて、終わってからもわくわくしていたから。

もちろん今日もたくさん素敵なイラストのグッズを買えたから嬉しい気持ちはある。

でも今は、一人になるのが寂しいと思う気持ちの方が大きくて。

人恋しいというか、なんというか……。

以前はマンガや本に囲まれた生活が中心で、“モノクロの世界に生きてる”なんて思っていたけど、よく考えれば、あの頃だって楽しくて充実していたんだ。

私なりのカラフルな色がついていた。

今だってその時と同じ状態に戻っただけのはずなのに、カラフルに見えないのはどうして……?

 
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