モノクロ
「アキちゃん?」
「えっ? あ、うん!」
ぼんやりと考え込みながら歩いていた私に、ランランが気付いて話し掛けてくれる。
咄嗟に笑顔を向けたけど、ぼんやりとしている姿を見られてしまっていたみたいで、ショウからも声が飛んできた。
「アキ、どうしたんだよー! 浮かない顔して!」
「ううん! 何でもないよ~!」
ショウとランランに変に思われちゃいけないと私は必死に笑顔を浮かべる。
久しぶりに友達と一緒に過ごしているんだから、暗い気持ちになっちゃダメ。
せめて二人と別れるまでは笑顔でいなきゃ。
話題を変えようと私は口を開く。
「あっ、そういえばさ、ランランがオススメしてくれたマンガって」
「さきこ?」
「へっ?」
聞き慣れた名前を呼ばれ、私は反射的にその声に振り向いた。
振り向かなくても「さきこ」と呼ぶのは一人しかいないとわかっているのに、そこにいるいつもとは違う私服姿の先輩に対して、私は息をのんでしまった。
「やっぱり、さきこ。偶然だな」
「は、はい」
「アキ、誰?」
「あ、えっと……、ひゃっ」
「アキっ!」
後ろからドンッと人がぶつかってきてよろけてしまった私の体を、ショウが抱き留めてくれる。
ショウは身長が高いから、私の体はその胸にすっぽりとおさまってしまう。
「あっぶねー! アキ、大丈夫か?」
「あ、うん。ありがとう、ショウ」
ショウはオタクという顔を持ちながらもバスケットボールのチームを組んでいて、ほぼ毎週末、チームで集まって活動しているという。
そのことを示すように、その体が鍛えられているのを無意味に抱きつかれるたびに感じるのだ。
ちなみにバスケットボールのチームを作るきっかけになったのは、アニメ化もされている大人気マンガの影響だったりするみたいなんだけど。
やっぱりショウはショウらしい。