モノクロ
「考えてみればさきこが俺のことを避けるようになったのって、友美に会った日からだったよな。あの時、俺が友美に対して持ってた気持ちに気付いたってことか」
「っ!」
「やっぱりそっか。普通に振る舞ったつもりだったし、あの頃はもう吹っ切れてたから大丈夫だと思ってたんだけど」
「せ、せんぱ……」
「さきこって鈍そうに見えて、意外と鋭いよな~。……そりゃあ、実の妹に恋愛感情を抱いてた、なんて知ったら、気持ち悪いって思うよな」
「……っ!」
嘲笑する先輩の表情が苦しそうで。
言葉がうまく出てくれない代わりに、私は「違う」と首を横に振る。
気持ち悪いだなんてこれっぽっちも思ってない。
ただ、先輩がツライ想いをずっとしてきてたと想像したら苦しかっただけ。
一途すぎる想いを気持ち悪いだなんて思うわけない……。
目の前にある苦しげな先輩の表情に、胸が押しつぶされそうだった。
私は先輩にそんな顔をさせたいわけじゃない。
早く私の想いを伝えなきゃと思えば思うほど、息をすることもできないくらい喉の奥がぎゅうっと締め付けられて声が出せない。
代わりに出てくるのは涙だけ。
先輩の指が私の涙を拭い、悲しげに笑う。
「……ごめんな、さきこ。気持ち悪いさせて、ごめん」
「っ、ち、違うん、です!」
「……」
「気持ち悪いだなんて、思いません……! だって、先輩は友美さんのこと、真剣だったんでしょ!? 先輩の気持ちを考えたら、苦しくて、悲しくて……っ。でも、先輩はちゃんと乗り越えて三神さんと幸せになることを決めたんだって思ったから……。私、先輩に幸せになって欲しいから……私なんかがいつまでも先輩の近くにいたら、先輩の幸せを壊してしまうって……」
「何でそこで絢が出てくんの。絢とは付き合ってたことはあるけど、今はただの同期でしかない」
「……嘘、だって先輩、三神さんとより戻したんでしょ? 三神さんはずっと先輩を想ってて、素敵な指輪をしてたのも見たし、幸せそうで……。それに先輩、友美さんの言葉に彼女と幸せになるって頷いたじゃないですか。彼女って三神さんでしょ? 先輩は三神さんと結婚して、幸せになるんでしょ……?」
私の疑問ばかりの言葉に先輩はきょとんと目を丸くした後、ふっと頬を緩める。