モノクロ
 

あまりの嬉しさにぼろぼろと零れる涙を止めることができない。

そんな私の頭を撫でてくれる大きい先輩の手。


「あいつ以上に大切な存在ができるなんて想像もしてなかったのに、どんな魔法使ったんだよ。さきこ」

「私は、何も……っ。ただ、先輩のことが好きで仕方なくて……先輩のそばで、先輩を笑顔にしたかっただけで」

「ふ、そういうところに惹かれたんだろうな」

「……」

「な、さきこ。今も俺のこと好きでいてくれてるって思っていい?」

「……はい……っ」

「はぁ、良かった」


安堵したように笑った先輩を見れたのが嬉しくて、私も頬を緩める。


「さてと。さきこには責任取ってもらわねぇとな」

「……へ?」

「当たり前だろ? 色のついた世界の楽しさとか幸せを俺に教えて、抜けられないところまで連れてきたのはさきこなんだから。これからずっと、俺のそばでバカみたいに笑ってろよ。もう、色のない世界になんて興味はないからな」


にっと先輩が笑う。それは、私の大好きな笑顔。


「……せ、せせ、せせせ」

「は? 壊れた?」

「先輩が笑ってる……っ」

「そりゃ笑うよ。サイボーグじゃねぇんだから」

「良かったぁ。心から笑ってくれてるんですよね?」

「笑ってる笑ってる。つーか、もう泣くなよー。バカみたいに笑っとけっつったばっかだろー?」

「だ、だって……っ」


嬉しさで涙がどんどん溢れてくる。

でも、「バカみたいに笑ってろ」なんて酷い言われ方だけど、先輩がそう言うなら先輩のそばで笑顔でいたい。

そして、私も。ずっと先輩の笑顔を見ていたい。


「うぐぅー」

「何だよそれっ、マジで色気ねぇ泣き方だな~!」

「むぐぐぐぐ」


先輩はくすくす笑いながら、手の甲で涙を拭おうとした私の手を片手で捕まえ、いつの間にか手にしたティッシュで私の涙を拭ってくれる。

 
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