モノクロ
 
「勝手に決めんなよ」

「……へ?」

「一人で勝手に結論出すなって言ってんの。一緒になるんだから、さきこの問題は俺の問題でもあるだろ?」

「で、でも、先輩の傍にいるには結局はそうするしかないし」

「ちゃんと考えてる。俺のわがままでさきこの今を潰さないためにはどうしたらいいかって考えて、策も考えて、プロポーズしたんだ」

「どういう……」

「さきこは仕事を続けたらいい」

「へ……?」


仕事を続ける?

でもそんなことしたら、先輩と離れ離れになってしまう。

もしかして先輩は私を連れて行くのが嫌になってしまったのだろうか。


「それ、離れ離れになるってことですか?」

「違うよ。パソコンがある時代なんだし、企画の仕事はどこでもできるだろ? 実際、営業の拠点間でのやりとりはメールとか電話だし、テレビ会議をすることだってある。何も難しいことじゃない」

「……そんなこと、本当にできるんですか? だって、企画部の人にも相談とかしないといけないだろうし」

「問題ない。企画部の部長にもとっくに話は通してる。とりあえず、たとえ話でしただけどな」

「えっ!? うそっ!」


部長にももうそんな話をしてるの!? いつの間に!


「ホント。あの感じなら上層部を説得するのも難しくなさそうだし、俺たちが会社に入る前に辞めたみたいだけど以前にはそういう社員もいたらしい。後はさきこの気持ちだけだ。仕事を続けたいのか辞めるのか」

「な、何で、そんな大事なこと言ってくれなかったんですか!?」

「それはこっちの台詞だろ? 仕事の話をしてくれたらちゃんと話すつもりだったし、時期を見てさきこの意思を聞くつもりだった。なのに、悩んでるなら何で俺に先に相談しねぇんだよ」

「う……っ! だ、だから……」

「一人で悩むな。佐山なんかに相談するくらいなら、その前に俺に相談しろ。いいな?」


むすっと拗ねた顔の先輩を見て、はっと気付く。

え、もしかして……。
 
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