モノクロ
 

──外の空気がひんやりしていて気持ちいい。

吹き抜けていく風が、お酒で火照った身体を心地よく冷やしてくれる。


「あのっ、先輩っ」

「さきこ、家どこ?」

「えっと、あっちですけど、その前にお金を」

「いいよ、いらない。ほら、俺大先輩だし! って、大した額じゃないけどな~」


先輩は振り返って私にいひっと笑いかけ、またすぐに歩き出してしまう。

いつ払ってくれたのかなと少し考えた時、はっと気付いた。

……そうだ。きっと、さっきの電話の時に払っててくれたんだ。

先輩がそんなジェントルマンな行動をするなんて……申し訳ないけど想像もしてなかった。

本当にいいのかな? 甘えても……。

あんまり払う払うって言うのもしつこいと思われるだろうし……。

先輩が言ってくれている通りに甘えさせてもらおうと、私は先輩に向かって足を踏み出した。

先輩に追いついて横に並ぶと、先輩の視線が降ってきた。


「先輩」

「ん?」

「あの、ごちそうさまでしたっ」

「うん。こちらこそ。楽しかったな!」

「……はい!」


先輩の言葉が嬉しくて。きゅんと胸が甘く締め付けられる。

 
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