モノクロ
「……それもいいかもな」
「へ?」
くいっと手を引っ張られたと思った時には、すでに私の身体は先輩の胸の中にあった。
……えっ!?
「さきこ、あったけぇな。柔らかいし」
「ちょ、せせせ先輩っ!?」
私を包み込むように抱き締めてくる先輩の吐息がすぐそばで聞こえる。
ここここれ、何が起こってるんですか……!?
先輩の突然の行動に、私は完全に大パニックになっていた。
「あー。帰りたくねぇ……」
「あの、先輩」
「……さきこん家に泊まろっかなー」
「はいっ?」
「な、泊まってもいい?」
焦る私を他所に、先輩は私の耳元で甘く囁く。
その甘さと熱にぞくりとした。
「ななななっ、先輩っ、何を……っ」
「……ぶは! ほんと、さきこはかわいいねぇ~反応が。くくっ」
「またからかったんですか!? 酷い! もう私、帰りますっ!」
「くくっ」
私は先輩の胸を押しのけるようにしてその腕の中から抜け出し、先輩から顔を背ける。
赤く染まってるはずの顔を見られるのが恥ずかしくて仕方ない気持ちがある一方で、もっと先輩の胸の中に居たかったという気持ちもあって。
だって、先輩の胸の中はすごく心地良かったから。