モノクロ

 
+ § + § + § + § + § +


『先輩のことが好きなんです! たとえ、彼女がいても……っ』

『……』

『ごめんなさい……好きになったりして……、っ!?』


遥(はるか)の腕を引き、その細い体を啓太(けいた)は抱き締める。

遥は何が起こったのか分からなくて、呆然としてしまう。


『せ、せんぱ』

『……彼女なんていない』

『え?』

『あれは……あいつの嘘なんだ。俺が好きなのは──』

『ん……っ!』


遥の唇に啓太のそれが触れる。

幾度となく角度を変えて重なる唇に、鼻から抜ける甘い声を出しながら遥の息は上がっていく。

ようやく唇が離れた頃には遥の身体の力は抜けていて、啓太の胸に寄り掛かってしまった。

その身体を力強く支えてくれているのは、紛れもなく啓太だ。


『お前のことが好きだ』

『っ、先輩……本当に……?』

『ずっと好きだった。もう、離さない』

『嬉しい、先輩……っ』


夕暮れに包まれた校内で、ふたつの影が重なった。


+ § + § + § + § + § +
 
< 49 / 299 >

この作品をシェア

pagetop