モノクロ
 
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「くっそー! こんな量、終わるわけないっつの!」


オフィスに一人残った私は、カタカタとパソコンのキーボードを打ち続けていた。

しんとしたフロアに響くのは私の指が奏でるこの音だけ。

時計はもう夜の9時を指している。

終業時間直前に渡された資料の山。

近々会議で使うから、明日の午後一までにまとめておいて、とかるーく言われて、つい受け取ってしまったのだ。

すぐに内容を確認すれば良かったのに、他の仕事に追われていてできずにいて、みんなが殆ど帰ってしまった頃にその量の多さに気付いた。

先に割り振ってもらえば良かったと思ったけど、後の祭り。

こんなことは頻繁にあることで、きっと私は要領が悪いんだと思う。

でも、それが私の主な仕事だし、やるしかないんだけど。

資料のまとめ作業は時間がかかる。今回のも例に漏れず。

明日の午前中いっぱいあれば何とかギリギリ間に合うのかもしれないけど、間に合わなかったら困るし、ギリギリで焦るのが嫌で、目処がつくくらいまでは終わらせておきたいとサービス残業をしてまで私は作業をしていた。

……でも、一向に終わりが見えない。

無心にタイピングしながらも、早く帰ってマンガが読みたい!と、私の頭の中にはその欲望だけがグルグルと回っていた。

 
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