モノクロ
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「良かった……! 遥と啓太がくっついて!」
マンガの連載が始まって、2年半。
じれじれだった二人の関係がやっとで変わった。
困難やすれ違いを乗り越えての成就。
この先また困難なことが二人を襲い掛かるんだろうけど、きっと二人で乗り越えていくんだ。
ほくほくとした気持ちで私はマンガ本を閉じる。
マンガの中のキャラクターが幸せだと、自分まで幸せな気持ちになれる。
「いいなぁ……」
はぁ、と私は息をついて、ベッドにぽふんと寝転がった。
私の頭の中に浮かぶのは紀村先輩の笑顔。
出逢った瞬間からずっと先輩のことが頭から離れてくれない。
出逢ってからまだ3日。
なのに、もうこんなに先輩のことが好きなんだなぁ、私……。
一気に世界が変わった気がしちゃうよ……。
そう自分の恋心に浸りながら部屋を見渡すと、あちらこちらに散乱しているマンガの山が目に入った。
「……。」
はぁ、とさっきの感嘆の息とは違うため息が、私から溢れ落ちた。