モノクロ
 
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「……うぅん……」


定時を過ぎた頃、私は頭を抱えながらパソコンとにらめっこをしていた。

それは企画書を作るためで、ここ数日は就業時間に終わらせられる仕事量だということもあり、残業時間を企画書作成のために使っていた。

企画書の提出期限は出来次第で構わないという話になっていて、時間を見つけて作成することになったのだ。


「佐々木さん、お腹痛いんならトイレ行ってきたら?」

「そんなんじゃないですっ」


私の唸る声がうるさかったのか、隣のデスクに座る佐山(さやま)さんが涼しい顔をして話し掛けてきた。

佐山さんは企画部の先輩で、隣の席ともあってよく話す。

お腹を押さえていたわけじゃないのに、何でお腹が痛いなんて思われるのかな……。

確かに、お昼ご飯は「まだ食うのか?」と突っ込まれるくらいたくさん食べたけど。


「企画って難しいんですねぇ……。調べることたくさんです……」

「あれ、佐々木さん、企画書書いてるのか? ようやくヤル気になったんだな。ちょっと目覚めるのが遅いけど、いいことだな」

「うっ、やっぱり遅いですよね。ごもっともなご指摘ありがとうございます」

「どれどれ? オリジナルのブックカバー?」


佐山さんが興味津々に、企画書の文書を映し出している私のパソコンのディスプレイを覗き込んでくる。

佐山さんは男の人だけどこんなに距離が近いのに全くドキドキしないのは、男の人として見ていないことや佐山さんが既婚者ということもあるだろう。

正直妻子持ちに恋愛感情を抱こうとも思わないし、どちらかと言えば佐山さんは目の保養対象だ。

あっ、でも、不倫ってマンガで読んだような“禁断”じゃない!?

そういう目で佐山さんを見てみるのも……って、いや、やっぱりありえない。

ちょっとでも考えようとした私はアホだ!

 
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