モノクロ
時計の針がもう少しで天を向いて重なろうという時。
「よしっ!」
──タンッ!
私は『これでどうだ!』と言うようにキーボードのEnterを押す。
やっとで終わりが見えてきた。
息を大きく吸い込みながら両腕を上に上げて背伸びをすると、ぱきぱきと肩が鳴った。
よし、そろそろ帰ろうかな。残りは明日でも大丈夫そうだし、十分頑張った! ……と思う!
ファイルを保存して、閉じている時だった。
カチャッとドアが開く音がオフィス内に響いた。
「!?」
私はしないはずの音にビクッと身体を震わせ、その音がした方向を咄嗟に振り向いた。
とは言っても、パーティションがあって開いたと思われるドアは見えない。
ななな何っ!? こんな時間だし、会社にはもう誰もいないはずなのに……!
ドキドキと心臓の鼓動が速くなっていく。
冷や汗も背中をつーっと落ちる。
一人だし怖いよぉ……とは思っても、一人だという事実は変わらないし、このまま隠れているわけにもいかない。
ここは勇気を出すしかないんだ……!
──パワーをちょうだい、クラウス!
私はデスクの上に乗る大好きなマンガのキャラクター“クラウス”のフィギュアにそう願い、椅子からそーっと立ち上がった。
パーティションの上からドアの方をゆっくり覗く。