モノクロ
向日葵
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夕陽でオレンジ色にそまる校舎。そこに浮かび上がるのは、ふたつの影。
『……ごめん。浅間(あさま)の気持ちには答えられない』
『何でですか!? ……あたしが生徒だから……?』
『……そうだよ。わかるだろ?』
『やだ、先生……っ!』
菜摘(なつみ)はすがり付くように、直人(なおと)の背広を掴む。
でも、直人は菜摘の手を自分の背広からそっと外した。
そして、真っ直ぐと見つめる。
『……今は大人の男が珍しいと感じてるだけだ。高校生らしい恋愛をしなさい。応援してるから』
『嫌! あたしは先生が好きなの! 先生が欲しいんだもん……!』
『駄目だ。……俺にとって浅間は大事な生徒だ』
『じゃあ、何でこの前……あたしのこと、抱き締めたりしたんですか……?』
『っ、それは』
『先生もあたしのこと想ってくれてるんじゃないですか……? 本当のこと、教えてください! ……先生としてじゃなくて、男の人として』
『浅間……』
菜摘の強い視線と感情に直人は戸惑ったが、その想いに応えては駄目だと、振りきるように首を振った。
ふぅ、と大きく深呼吸をする。
『……男としても、浅間の気持ちには答えられない。……今は』
『今は……?』
『そうだ。……この意味、わかるな?』
『……っ! ……わかりました……っ。じゃあ……卒業したら、来てもいいですか……?』
『……』
声もなくゆっくりと小さく頷いたその顔は、夕日で赤く染まっていた。
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