モノクロ
 

***


「切ないなぁ……。好き合っていても結ばれることができないなんて」


はぁ……、と私は深く息をつく。

恋愛が成就するのって、すごく難しいんだな……。

きっと、お互いの矢印が向き合うのは奇跡で。多くの想いは一方通行。

……私の想いも。


──一昨日、紀村先輩に告白して、見事に玉砕してしまった。

でも、きっぱりと告白を断ってきた先輩だったけど、やっぱり先輩はどこまでも優しかった。

「……送れないけど……気を付けて帰れよ」。そう言って、帰って行ったんだ。

泣きはしなかったものの、その優しさにすごく胸が痛くて苦しくて、フラれるのってこんな感情なんだなと知った。

一度だけ人を好きになって付き合ったことがあったけど、自然消滅でフるフラれるという話ではなかったから。

でも、共通することは……。


「このままもう、話せなくなるのかな……」


ぽつりと溢した途端、その言葉が現実味を帯びて寂しさが一気に襲ってきた。

大好きな先輩の笑顔を見れなくなるの? 話せなくなるの?

そんなの、嫌……。

後輩としてならそばに居てもいいのかな?

先輩だって、「先輩後輩だったり友達の関係でもいいんじゃないか」って言ってたし……。

どんな形でもいいから先輩の傍にいたいと思うのは、やっぱりわがままなのかな?

そういうのってウザい?


「どうしたらいいのかな……。あっ、多賀城先生のマンガに教えてもらおうっ!」


私は寝転がっていたベッドからごろりと転げるようにして床に降りる。

四つん這いになりヨジヨジと床の上を這っていき、マンガの山に到着した。

えっと、この辺りにあるはず……あった!

目的のマンガを発見した私はそれを手に取り、ページをめくり始めた。

そのまま、いつものようにしてマンガの世界に入り込んでいく。

……先輩にフラれたことからも逃げるように。

 
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