モノクロ
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「──展開早くないか? 出逢ってまだ2週間で、話した時間はトータルで5時間くらい? それでもう告白して、しかもフラれたとか展開が早過ぎるだろ」
「ですよね……。企画書ができてテンション上がってた上に、先輩が優しいことばっかり言ってくるから、ついぽろりと気持ちが溢れちゃったんです」
「佐々木さんが食だけじゃなくて恋愛に関しても肉食だったとは、驚いたな。実はマンガマンガ言いながらも、ずっと彼氏が欲しかったとか?」
「食に関して肉食なのは認めますけど、恋愛に関してはそんなことありませんよ~。理屈とか抜きにして、紀村先輩ってすごくいいなって思ったんです。先輩のことたくさん知りたいし、ずっと一緒にいたいなって……。って、自分の恋バナするの慣れてないから恥ずかしいんですけどっ!」
すでに空になっている食器を前に、私は手で顔を覆う。
悩みがあろうとなかろうと、働き盛りのサラリーマンが食べるような定食をペロリと平らげてしまう私は、典型的な食欲旺盛人間なんだと思う。
今日は豚のしょうが焼き定食だったし、まさに肉食。
はぁと息をついて顔から手を離し、火照る頬をパタパタと手で扇ぐ。
「佐々木さんの肉食っぷりにも驚いたけど、紀村も人が変わったみたいだな。学生の頃は告白されたらほぼOKしてたって話だったし」
「……先輩に彼女がいないのって、いつからなんですか?」
「んー、去年の春くらいだったか。三神さんと別れた後はパッタリだと思うけど」
「……実は、三神さんのことがまだ好きだとか」
「そこまではわからないが、別れを切り出したのは紀村だって聞いたな」
「……」
自分で彼女をフっておいて、引きずってる……?
でも引きずるくらいなら、何で自分から別れを切り出したの?
……何か理由があって、別れなきゃいけなかったとか?
じゃあ、この前好きな人はいないって言ってたのも、嘘?
三神さんのことがまだ好きなのに、「好きな人はいない」って自分に言い聞かせてるの?
理由はわからないけど、何だか切ないよ……。