モノクロ
 

佐山さんが飲んでいたコーヒーカップを静かに置き、私をじっと見つめてくる。


「でも人生なんて何があるかわからないんじゃないのか? 話を聞く限り、紀村は佐々木さんのことを相当気に入ってると思う。今まで紀村が部署の違う後輩に対して構う姿はほとんど見たことはないし、そういう話も聞かないから」

「佐山さん……」

「何となくだけど、佐々木さんならイケそうな気がするしな」

「……ぷっ。どこにいけるんですか~っ」


佐山さんの言葉にはきっと根拠なんてない。

でも、何だかすごくあたたかくて、励ましてくれてるんだと感じた。

仕事の話じゃないのに、相談にのってくれて、こんなに親身になってくれて。


「佐山さん、ありがとうございます」

「別にお礼を言われるようなことはしてないけど。でも佐々木さんは大事な後輩だし応援はする。佐々木さんらしく頑張れ」

「はい……っ、ありがとうございます!」


「頑張れ」って言葉は先輩にも言われたもの。

佐山さんの「頑張れ」もすごく嬉しい。でも、先輩に言われた時のようにドキドキすることはない。

私をドキドキさせるのは先輩の言葉だけなんだ。

先輩の言葉が私に与えるパワーは本当に凄く大きいんだな、と改めて感じた。

 
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