モノクロ
 
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ブックカバーの企画書を部長に出してから、数日後。


「……」


私はデスクの上に置いた企画書をじっと見つめていた。

ついさっき提出していた企画書が戻ってきて、「赤文字で書き込みをしているから、確認後、修正をしなさい」と言い渡されたのだ。

まるでレポートの再提出を言い渡されるようなもので、もちろんその内容はダメ出しばかり。

覚悟はしていた。最初からうまくいくはずはないって。

でも、ここまでガッツリ書かれるとヘコむ……。

はぁぁ~、と長ーい長い溜め息が出てしまって、このまま机に突っ伏してしまおうかと思った時、斜め上から声が降ってきた。


「お腹痛いのか?」

「!」


いつものように声を掛けてきたのは佐山さん。

お腹は痛くない。でも、そう言われると何か痛くなってくる気がする……。

逆プラセボ効果……。


「お腹はいつも通り絶好調なので、ご心配に及びません」

「ならいいけど。……ほう。これは、ものの見事に真っ赤だな」

「残念ながら、花丸はどこにもありませんでした……ハイ。」

「黒で残ってる部分を花丸と思えばいい。まぁでも、差し戻しは気にするな。いや、気にはしろ」

「どっちですかぁ」


そもそも、黒で残っている部分は半分あるかないかくらいなのだ。

大いに気にするに決まってる。


「初めて取り組むことなんだから、誰でも最初はそうなる。最初から上手くいくやつなんて……いや、俺はそこまで真っ赤にはならなかったな」

「うっ……ですよねぇぇ……」


ここまでズバッと言われると逆に清々しい気もするけど、やっぱりヘコむ。

 
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