殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
実家には親戚が集まっていた。
翼の合格を褒め称える陽子の父・貞夫。
陽子の妊娠を報告する陽子の母・節子。
めでたい事が二重になり、会場はヒートアップしていた。
午後零時より午後三時まで、二人は確かに善意の人々の輪の中にいた。
これが後に起きる事件のアリバイとなったのだった。
その日。
翼は節子にプレゼントをした。
それは小型録音機だった。
手取り足取り使い方を教える翼。
「使い古しでごめんねお母さん」
翼のその言葉で遂に泣き出した節子。
「あんたは私の自慢の息子だよ」
節子の言葉に翼も泣いていた。
帰りの車の中で陽子は、孝が本当の父親かも知れないことを報告していた。
「何言ってるの? そんなことある分けがない!」
「ごめんね翼。私気付いてしまったの。翼が狂ったように私を抱いた夜のこと。あの少し前お義父さん家に来て、持って来たケーキを食べたら眠くなったってこと」
浦山ダムの見える橋の近くで陽子は車を止めた。
ある有名な旅館の看板の近くで、其処には少し空き地があったからだ。
フラフラと橋の上を歩いて行く陽子。
翼は後を追いかけた。
「私怖い! この子が翼の子供じゃないような気がして」
陽子は激しく自分のお腹を叩いた。
「何するんだ陽子!」
翼は陽子の手を止めた。
「こんな子流れてしまえばいい!」
陽子は泣き叫んだ。
「馬鹿! この子は僕の子だ! 僕達の子だ!」
翼は陽子の唇を自分の唇で塞いだ。
「僕が父親だ!!」
翼は狂ったように陽子を抱き締めていた。
今にも身を投げ出し兼ねない陽子。
必死で諭す翼。
やっとの思いで車に戻った翼は激しい愛を陽子にぶつける。
「そんなに流したいなら僕が流してやる! もしそれで流れなかったら、それは僕の子供だってことだ」
陽子を救おうとして、沿道に面した小さな駐車場で翼は陽子を激しく愛した。
陽子の胎児が誰の子でも良くなった。
それより陽子を守りたかった。
そのために……
陽子を抱き締めた。
それが、翼のたどり着いた愛すると言うことだったのだ。
翼の激しい愛が陽子の体に突き刺ささった。
でも陽子は悟った。
あの日……
睡眠薬入りケーキを食べた後で何があったのかを。
翼の合格を褒め称える陽子の父・貞夫。
陽子の妊娠を報告する陽子の母・節子。
めでたい事が二重になり、会場はヒートアップしていた。
午後零時より午後三時まで、二人は確かに善意の人々の輪の中にいた。
これが後に起きる事件のアリバイとなったのだった。
その日。
翼は節子にプレゼントをした。
それは小型録音機だった。
手取り足取り使い方を教える翼。
「使い古しでごめんねお母さん」
翼のその言葉で遂に泣き出した節子。
「あんたは私の自慢の息子だよ」
節子の言葉に翼も泣いていた。
帰りの車の中で陽子は、孝が本当の父親かも知れないことを報告していた。
「何言ってるの? そんなことある分けがない!」
「ごめんね翼。私気付いてしまったの。翼が狂ったように私を抱いた夜のこと。あの少し前お義父さん家に来て、持って来たケーキを食べたら眠くなったってこと」
浦山ダムの見える橋の近くで陽子は車を止めた。
ある有名な旅館の看板の近くで、其処には少し空き地があったからだ。
フラフラと橋の上を歩いて行く陽子。
翼は後を追いかけた。
「私怖い! この子が翼の子供じゃないような気がして」
陽子は激しく自分のお腹を叩いた。
「何するんだ陽子!」
翼は陽子の手を止めた。
「こんな子流れてしまえばいい!」
陽子は泣き叫んだ。
「馬鹿! この子は僕の子だ! 僕達の子だ!」
翼は陽子の唇を自分の唇で塞いだ。
「僕が父親だ!!」
翼は狂ったように陽子を抱き締めていた。
今にも身を投げ出し兼ねない陽子。
必死で諭す翼。
やっとの思いで車に戻った翼は激しい愛を陽子にぶつける。
「そんなに流したいなら僕が流してやる! もしそれで流れなかったら、それは僕の子供だってことだ」
陽子を救おうとして、沿道に面した小さな駐車場で翼は陽子を激しく愛した。
陽子の胎児が誰の子でも良くなった。
それより陽子を守りたかった。
そのために……
陽子を抱き締めた。
それが、翼のたどり着いた愛すると言うことだったのだ。
翼の激しい愛が陽子の体に突き刺ささった。
でも陽子は悟った。
あの日……
睡眠薬入りケーキを食べた後で何があったのかを。