殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
「えっ!?」
目を丸くした翼。
(ん!?)
それでも上目遣いに考えた。
(あれー?)
翼は結局何で怒られたのか解らなかったのだ。
「お義兄さんと私のお姉さんは、十歳離れているの。そのことよ」
陽子の言葉でやっと叱られた意味を理解した翼。
「はい。分かりました。でも、何て呼んだら」
としか言えなかった。
翼は腕を組んだ。
でも答えは出ない。
「お義兄さんは翼君にとって?」
「叔父さんです。お母さんの弟なので」
やっとそれだけ言えた。
「あ、ごめん。そうだった。それじゃやっぱり叔母さんだわ」
陽子は急に笑い出した。
それを受けて翼も笑った。
「そうだよね。幾ら若くても叔父さんの連れ合いは叔母さんだよね」
陽子はそう言いながら微笑んだ。
とりあえず家の中に入った陽子は掘り炬燵に潜り込んだ。
「あれ布団替えた? 何か厚ぼったい」
堀内家は夏でもレースのカバーを掛けてそのまま堀こたつを使用していた。
「これでスイッチ入れれば冬みたいだね」
陽子はそう言いながら、炬燵の中をのぞき込んだ。
「でも不思議。スイッチ入ってなくても何か暖かい」
陽子は翼の用意した青い蜜柑を食べながら姉純子の帰りを待つことにした。
「初蜜柑よ。でももうあるとはね」
陽子は顔を少ししかめながら、まだ酸っぱい蜜柑を頬張った。
「うわー、酸っぱい。でも美味しい。ねえ、翼君。初物を食べる時、ドッチを向けば良かったんだっけ?」
「さあー」
「じゃあ、とりあえずお母さんの居る方向かな」
そう言いながら陽子は武甲山を見つめた。
「確か、中川駅の近くにあるって聞きましたが」
陽子は頷きながら翼の言葉を聞いていた。
「あ、そうだ。さっきそこでカワセミの道標見たんだけど、横瀬に居たっけ?」
陽子は不思議な気分になりながら翼に聞いていた。
妙に気持ちが落ち着くのだ。それが何だか解らない。陽子は首を傾げながら翼の返事を待っていた。
「あーあ、あれですか? あれはカワセミではなくヤマセミだと聞きましたが」
翼は腕を組んだ。
「実は僕もカワセミだと思っていました。行ったことないのですが、武甲山にいるらしいです」
照れ笑いをする翼を、陽子はじっと見つめた。
翼は恥ずかしそうに目を伏せた。
目を丸くした翼。
(ん!?)
それでも上目遣いに考えた。
(あれー?)
翼は結局何で怒られたのか解らなかったのだ。
「お義兄さんと私のお姉さんは、十歳離れているの。そのことよ」
陽子の言葉でやっと叱られた意味を理解した翼。
「はい。分かりました。でも、何て呼んだら」
としか言えなかった。
翼は腕を組んだ。
でも答えは出ない。
「お義兄さんは翼君にとって?」
「叔父さんです。お母さんの弟なので」
やっとそれだけ言えた。
「あ、ごめん。そうだった。それじゃやっぱり叔母さんだわ」
陽子は急に笑い出した。
それを受けて翼も笑った。
「そうだよね。幾ら若くても叔父さんの連れ合いは叔母さんだよね」
陽子はそう言いながら微笑んだ。
とりあえず家の中に入った陽子は掘り炬燵に潜り込んだ。
「あれ布団替えた? 何か厚ぼったい」
堀内家は夏でもレースのカバーを掛けてそのまま堀こたつを使用していた。
「これでスイッチ入れれば冬みたいだね」
陽子はそう言いながら、炬燵の中をのぞき込んだ。
「でも不思議。スイッチ入ってなくても何か暖かい」
陽子は翼の用意した青い蜜柑を食べながら姉純子の帰りを待つことにした。
「初蜜柑よ。でももうあるとはね」
陽子は顔を少ししかめながら、まだ酸っぱい蜜柑を頬張った。
「うわー、酸っぱい。でも美味しい。ねえ、翼君。初物を食べる時、ドッチを向けば良かったんだっけ?」
「さあー」
「じゃあ、とりあえずお母さんの居る方向かな」
そう言いながら陽子は武甲山を見つめた。
「確か、中川駅の近くにあるって聞きましたが」
陽子は頷きながら翼の言葉を聞いていた。
「あ、そうだ。さっきそこでカワセミの道標見たんだけど、横瀬に居たっけ?」
陽子は不思議な気分になりながら翼に聞いていた。
妙に気持ちが落ち着くのだ。それが何だか解らない。陽子は首を傾げながら翼の返事を待っていた。
「あーあ、あれですか? あれはカワセミではなくヤマセミだと聞きましたが」
翼は腕を組んだ。
「実は僕もカワセミだと思っていました。行ったことないのですが、武甲山にいるらしいです」
照れ笑いをする翼を、陽子はじっと見つめた。
翼は恥ずかしそうに目を伏せた。