殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
 薫もハネムーンベイビーを宿していた。

何も知らない薫は香の妊娠を嘆いていた。

ヴァージンだった香が気付かない内に出来ていた子供。

きっと自分達の結婚式で泥酔させられ、複数の男性の餌食になったのだと思った。

香の出産時期から計算するとそれ以外考えられなかったのだ。

でもそれでは孝の友人を疑うことになる。
そう思い悩んでいた。


そんな時孝は、結婚式に招待した友人達の仕業ではないかと薫に打ち明けたのだった。

嘘も方便。
でも孝にはこれ以外逃れる方法はなかったのだ。


薫は孝の言葉を受けて、悲劇の子供を自分の子供として育てたいと願った。

そして孝と香のそれぞれに自分の決意を語った。


「さすが俺が惚れ込んだ女房だ」

孝は大賛成して、薫を誉めちぎった。

その上で香には、一人では大変だから薫に任せた方がいいと言い含めた。

勿論香に、胎児の父親が自分であることは打ち明けることはせずに。




 香の出産を隠すためお産婆さんが呼ばれた。

自宅で出産するは人目につくと、孝の親から貰ったアパートでの出産となった。




 双子の姉妹が同じ部屋で、同じ日に男児を一人ずつ出産した。

薫の子供は翼と、香の子供は翔と名付けられた。

そして二人の子供は、薫が産んだ双子として届けられた。


それで全てが終わるはずだった。

孝を本気で愛してしまった香は、翔を取り戻したくなった。

香は孝の態度で、翔の父親だと確信したのだった。




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