殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
「さあ、待ってろよコミネモミジ。僕達のパワーで真っ赤に色付けでやるからな」
遂に……
翼が陽子の手を取る。
陽子はもっと顔を赤らめながら、翼を見つめた。
「コミネモミジを赤く出来るの?」
「二人なら出来るさ!」
力強く翼が言う。
陽子はそんな頼もしそうな翼を見て笑った。
「待っていろよ、コミネモミジ!」
調子づいて陽子が拳骨を天に伸ばした。
翼も遅れまいとして真似をする。
二人は笑い合いながら、ゆっくり歩き出した。
「きっとコミネモミジも、今の陽子の顔みたいに真っ赤になるさ」
不意に立ち止まり、陽子の耳元で翼が囁く。
翼は陽子をおちょくるように、今度は足を速めた。
これが翼の考えた浅はかな悪知恵だった。
「こらーっ!」
陽子は顔を更に赤くして、翼を追い掛けた。
翼は逃げる振りをして、陽子を挑発した。
捕まえて、抱き締めて欲しかった。
不器用な翼にはそれが精一杯の甘える行為だった。
陽子もそれとなく気付き、乗った振りをして翼を追い掛けた。
どんどん愛しくなる翼。
更に燃え上がる恋の炎。
本当は重いバッグ。
でも苦にはならなかった。
陽子はこの至福の一時に益々陶酔していった。
丁字路が現れた。
右に行くと切り丸太の丁字路。
その先の横瀬駅に通じる。
左に行くと、多分秩父札所八番西善寺。
でも其処は丁字路ではなかった。
今来た道のV字の形にもう一つの道があった。
「この道がさっきの工場へ続くのねきっと」
その道に目をやりながら陽子は、駅に続く道を反対に行く。
「この道は真っ直ぐコミネモミジのお寺に続いるのかな?」
陽子は少し辛そうだった。
「やっぱり持つよ」
見かねて翼がバッグに手を掛ける。
陽子は慌てて、その手を払った。
「ありがとう翼。でも大丈夫よ」
陽子は笑った。
翼は陽子の気持ちを察し、そっとバッグから手を外した。
遂に……
翼が陽子の手を取る。
陽子はもっと顔を赤らめながら、翼を見つめた。
「コミネモミジを赤く出来るの?」
「二人なら出来るさ!」
力強く翼が言う。
陽子はそんな頼もしそうな翼を見て笑った。
「待っていろよ、コミネモミジ!」
調子づいて陽子が拳骨を天に伸ばした。
翼も遅れまいとして真似をする。
二人は笑い合いながら、ゆっくり歩き出した。
「きっとコミネモミジも、今の陽子の顔みたいに真っ赤になるさ」
不意に立ち止まり、陽子の耳元で翼が囁く。
翼は陽子をおちょくるように、今度は足を速めた。
これが翼の考えた浅はかな悪知恵だった。
「こらーっ!」
陽子は顔を更に赤くして、翼を追い掛けた。
翼は逃げる振りをして、陽子を挑発した。
捕まえて、抱き締めて欲しかった。
不器用な翼にはそれが精一杯の甘える行為だった。
陽子もそれとなく気付き、乗った振りをして翼を追い掛けた。
どんどん愛しくなる翼。
更に燃え上がる恋の炎。
本当は重いバッグ。
でも苦にはならなかった。
陽子はこの至福の一時に益々陶酔していった。
丁字路が現れた。
右に行くと切り丸太の丁字路。
その先の横瀬駅に通じる。
左に行くと、多分秩父札所八番西善寺。
でも其処は丁字路ではなかった。
今来た道のV字の形にもう一つの道があった。
「この道がさっきの工場へ続くのねきっと」
その道に目をやりながら陽子は、駅に続く道を反対に行く。
「この道は真っ直ぐコミネモミジのお寺に続いるのかな?」
陽子は少し辛そうだった。
「やっぱり持つよ」
見かねて翼がバッグに手を掛ける。
陽子は慌てて、その手を払った。
「ありがとう翼。でも大丈夫よ」
陽子は笑った。
翼は陽子の気持ちを察し、そっとバッグから手を外した。