殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
自分の事を信頼して無防備な陽子。
それは、今も同じ。
本当は直ぐにでも陽子を抱きたかった。
抱き締めたかった。
でも翼は又躊躇していた。
未だに中途半端な自分がねたましく感じて……
結局翼はキス以外何も出来なかった。
それでいいと思った。
クリスマスイブに陽子が傍に居る。
それだけでも嬉しい。
翼は身も心も舞い上がっていた。
二人の仲睦まじさは、忍と純子夫婦から伝え聞いていた。
でも、どうしてもこの目で見たかったのだ。
確かめたかったのだ。
余命幾ばくも無いことを知っていた勝。
せめて最期のクリスマスイブは……
案じていた翼と、その恋人の陽子と一緒に過ごしたかったのだ。
節子と貞夫夫婦には、陽子と一緒に許可は貰った。
でも……
クリスマスは本来家族で過ごすためのものだ。
だから海外では十二月二十四日から、二十六日にクリスマス休暇が与えられる訳なのだ。
節子に寂しい思いをさせることになる。
でも敢えて、承知してもらったのだった。
「中川にはな……」
そうそう、まずは恒例の赤穂浪士外伝。
翼にせがまれて、語り部になる勝。
一言も漏らさないようにと聞き耳を立てる翼。
『春まで持つかどうか』
主治医は言う。
それでも、長生きしてほしいと翼は思っていた。
もっと沢山聴きたいと思っていた。
でも確実に死期が近付いていることは解っていた。
だから尚更、一言一句逃したくなかったのだった。
でも陽子はこの話に疑問を持った。
実は、陽子の住んでいる武州中川駅から程近い所にある赤穂浪士の伝説だったのだ。
陽子も母の節子から何時も聞かされていたのだった。
中川駅周辺。
其処は、勝と節子の故郷でもあったのだ。
陽子は翼同様、子供の頃に母の節子にその話をねだっていたのだった。
勝の語る赤穂浪士。
節子の語る赤穂浪士。
内容はほぼ同じ。
でも吉三郎の死に様が違っていたのだ。
陽子はいつの日にか、節子から聞いた話を翼にも聞いてもらいたいと思っていた。
それは、今も同じ。
本当は直ぐにでも陽子を抱きたかった。
抱き締めたかった。
でも翼は又躊躇していた。
未だに中途半端な自分がねたましく感じて……
結局翼はキス以外何も出来なかった。
それでいいと思った。
クリスマスイブに陽子が傍に居る。
それだけでも嬉しい。
翼は身も心も舞い上がっていた。
二人の仲睦まじさは、忍と純子夫婦から伝え聞いていた。
でも、どうしてもこの目で見たかったのだ。
確かめたかったのだ。
余命幾ばくも無いことを知っていた勝。
せめて最期のクリスマスイブは……
案じていた翼と、その恋人の陽子と一緒に過ごしたかったのだ。
節子と貞夫夫婦には、陽子と一緒に許可は貰った。
でも……
クリスマスは本来家族で過ごすためのものだ。
だから海外では十二月二十四日から、二十六日にクリスマス休暇が与えられる訳なのだ。
節子に寂しい思いをさせることになる。
でも敢えて、承知してもらったのだった。
「中川にはな……」
そうそう、まずは恒例の赤穂浪士外伝。
翼にせがまれて、語り部になる勝。
一言も漏らさないようにと聞き耳を立てる翼。
『春まで持つかどうか』
主治医は言う。
それでも、長生きしてほしいと翼は思っていた。
もっと沢山聴きたいと思っていた。
でも確実に死期が近付いていることは解っていた。
だから尚更、一言一句逃したくなかったのだった。
でも陽子はこの話に疑問を持った。
実は、陽子の住んでいる武州中川駅から程近い所にある赤穂浪士の伝説だったのだ。
陽子も母の節子から何時も聞かされていたのだった。
中川駅周辺。
其処は、勝と節子の故郷でもあったのだ。
陽子は翼同様、子供の頃に母の節子にその話をねだっていたのだった。
勝の語る赤穂浪士。
節子の語る赤穂浪士。
内容はほぼ同じ。
でも吉三郎の死に様が違っていたのだ。
陽子はいつの日にか、節子から聞いた話を翼にも聞いてもらいたいと思っていた。