殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
「お願いします。翼に大学を受験させて下さい」
陽子は純子と義兄の忍に頭を下げた。
「俺は構わないよ。お祖父さんが良く言ってたんだ。家から大学に出せることなら出してやりたいって」
「実は私も」
純子は立ち上がって、勝が残した翼名義の貯金通帳を持って来た。
「何かあったらこれをって頼まれていたの」
純子は通帳と印鑑を陽子に手渡した。
陽子は勝の翼に対する愛情を強く感じ、通帳を胸に抱き締めた。
「大学だって。そんな事出来ないよ」
翼は家族の決定を聞かされ戸惑っていた。
陽子は勝が残してくれた通帳を翼に手渡した。
「お祖父さんの後押しがあるのよ。翼が大学に行くことが一番の供養になると思うの」
「そうだよ翼。誰にも遠慮はいらない。翔と正々堂々戦ってみろ」
忍は翼の手を握り締めた。
「前のようにここで頑張ったらいい」
忍はいつの間にか泣いていた。
四月から翼は家庭教師のアルバイトをしながら東大を目指すことになった。
どうせやるなら真っ正面から翔に望みたい。
翼にライバル意識が生まれた瞬間だった。
「実は、諦めていた事があるんだ。僕の夢は教師になることだった。でも大学に行きたいなんて言い出せなかった」
翼が本音を言う。
陽子は頷きながら、肩を抱いた。
「解ってたよ」
陽子のその一言は、翼により深いやる気を与えていた。
翼が東大を目指す事を知った親戚から、中学と高校受験のサポートを頼まれた。
翼は快諾した。
受験生を教えることは、自分も基礎の勉強になるからだった。
こうして翼の壮絶な受験戦争が始まった。
家庭教師は午後七時から九時までの二時間。
その後家で猛勉強。
昼は図書館で調べ物。
一日中が受験のために費やされた。
翼は何故か生き生きしていた。
陽子に支えられて初めて得られた勉強が出来る喜び。
それがやがて生きがいになっていった。
陽子は純子と義兄の忍に頭を下げた。
「俺は構わないよ。お祖父さんが良く言ってたんだ。家から大学に出せることなら出してやりたいって」
「実は私も」
純子は立ち上がって、勝が残した翼名義の貯金通帳を持って来た。
「何かあったらこれをって頼まれていたの」
純子は通帳と印鑑を陽子に手渡した。
陽子は勝の翼に対する愛情を強く感じ、通帳を胸に抱き締めた。
「大学だって。そんな事出来ないよ」
翼は家族の決定を聞かされ戸惑っていた。
陽子は勝が残してくれた通帳を翼に手渡した。
「お祖父さんの後押しがあるのよ。翼が大学に行くことが一番の供養になると思うの」
「そうだよ翼。誰にも遠慮はいらない。翔と正々堂々戦ってみろ」
忍は翼の手を握り締めた。
「前のようにここで頑張ったらいい」
忍はいつの間にか泣いていた。
四月から翼は家庭教師のアルバイトをしながら東大を目指すことになった。
どうせやるなら真っ正面から翔に望みたい。
翼にライバル意識が生まれた瞬間だった。
「実は、諦めていた事があるんだ。僕の夢は教師になることだった。でも大学に行きたいなんて言い出せなかった」
翼が本音を言う。
陽子は頷きながら、肩を抱いた。
「解ってたよ」
陽子のその一言は、翼により深いやる気を与えていた。
翼が東大を目指す事を知った親戚から、中学と高校受験のサポートを頼まれた。
翼は快諾した。
受験生を教えることは、自分も基礎の勉強になるからだった。
こうして翼の壮絶な受験戦争が始まった。
家庭教師は午後七時から九時までの二時間。
その後家で猛勉強。
昼は図書館で調べ物。
一日中が受験のために費やされた。
翼は何故か生き生きしていた。
陽子に支えられて初めて得られた勉強が出来る喜び。
それがやがて生きがいになっていった。