ヤンキー×お嬢様
何コイツ。
作り笑いじゃないか。
「そっか、人違いだったみたい」
人違い?
「僕、柊 涼太〈ひいらぎ りょうた〉。宜しくね」
握手を求める手。
思わず反射的に右手を出そうとしたが、チャイムが鳴り我に帰る。
だめじゃないか、シナリオ通りに進めなくちゃ。
手を引っ込め、見てないフリし1時間目の教科を確認する。
数学。
スクバからノートと筆箱を用意する。
教科書は違うから、柊に借りるハメになるな。
机に次の授業を準備した後、周りを見た。
「・・・」
きっと、眉が寄っただろうな。
周りには女子がいた。
よく考えれば、分かる話だ。
朝学活の終わりから1時間目の授業開始までに、10分ほどの休み時間がある。
普段仲の良い子と話す時間でも、今日のように転入生いる日は質問攻めだ。
「咲丘さん!」
女子が話しかけた瞬間、ブレザーから出したウォークマンのイヤホンを耳に突っ込んだ。
神業だ。