こっち向いて、早瀬先生。
月光と夜桜
またか……と、今日何度目がの
ため息が、口からこぼれた。
ため息の原因は
目の前のきれいな花が飾られた
花瓶にあった。
細くくびれたそのシルエットには
黄色や白の菊の花や
真っ赤に燃えるような彼岸花が
飾られている。
まったく毎朝、お金をかけて
ご丁寧に…。
花だって、ただじゃないだろうに。
「花村さん、まだ生きてたの?」
鼻につくような声が
わたしの名前を呼ぶ。
この人の声は異常に高い。
おそらくアニメ声というやつだろう。
気味の悪い声の所為で、全身に
ぞわっと悪寒が走り抜ける。