闇
自分の家から翔織の家迄 全速力で走って。
息を切らしたまま、ドアノブを捻る。
やっぱり、鍵は掛かっていなかった。
「翔織っ!!」
私は叫びながら飛び込んで。
その光景に息を飲んだ。
酔っているのか、赤ら顔で眠っている叔父さん。
その隣には、壁に躰を預けて喘ぐ、翔織の姿が在った。
その右足の太股から突き出している、銀色の物。
それが包丁だと解るのに、時間は掛からなかった。
音を立てないように気を付けながら、私は翔織の肩に手を置いた。
「…………っ。」
翔織は僅かに目を開けたけど、焦点が定まっていない。
足からは、どくどくと血が流れ続けてる。
私は翔織の左腕を自分の肩に回して、立ち上がった。
「……くっ……。」
重い。
翔織は ぐったりとしていて、彼の全体重が、私に掛かる。
でも、何とかして此処から連れ出して、手当てしなきゃ。
翔織は……死んでしまう。
その時 私は、翔織の左手に、携帯が握られている事に気付く。
その画面には、『送信しました』の文字。
翔織……傷付いた その躰で、私にメールを打ってくれたの?