その夜、私は夢を見た。

10年前の、封印していた記憶。

お父さんが――死んでしまった記憶。

その時の事を、私は全然 覚えていなかったけど、夢を見て、思い出した。

白い天井、白い壁、白い床、白いベッド、白い――お父さんの顔。

優しかった お父さんは、癌で亡くなってしまった。

私は今だに信じられなくて、病室を飛び出した。

其処で、1人の少年に出会った。

白銀の髪、紅い瞳。

凄く、綺麗だと思った。

「お父さんが……死んじゃったのっ。」

泣きじゃくる私を抱いた、彼の長い睫毛が、少し揺れた。

「俺も……父さんと母さんが、死んじゃった……。」

私は その言葉に顔を上げる。

「私、みさき。貴方は?」

「俺は――としき。」

< 143 / 189 >

この作品をシェア

pagetop