翌日、私達は翔織の家へ向かった。

祐貴さんは ずっと其処に居る。

何となく、そんな気がしたから。

翔織の家に着くと、やっぱり祐貴さんが居て。

翔織を見て、嬉しそうに笑った。

「翔織。やっぱり俺の所に戻って来たな。待ってたぜ?」

「……祐貴さん……。」

翔織の声が震えている。

私は黙って、彼の左手を、握った。

翔織は一瞬、驚いたように此方を見て。

微かに、笑顔を浮かべた。

そして、真っ直ぐに、祐貴さんを見つめた。

「……祐貴さん、此処は、貴方の家じゃありません。俺の家です。出て行って貰えませんか?」

「あ?」

祐貴さんは あからさまに嫌な顔を する。

「てめェ、この家を借りるのに使った金は、誰のだと思ってる。」

「両親のです。貴方の物じゃありません。家賃は、自分でバイトを して、払ってます。」

「今迄 育ててやった恩を忘れたのかよ!?」

翔織は、哀しそうに首を横に振る。

「貴方には、感謝しています。両親を亡くした俺を育ててくれて。両親を殺したのが、貴方でも。頼る者が居ない俺に、歪でも愛を くれた。」

「…………。」

祐貴さんは黙り込んだ。

私も、曽根倉君達も、黙って事の成り行きを見守っている。

< 164 / 189 >

この作品をシェア

pagetop