「何だと!?」

祐貴さんに怒鳴られても、私は怯まなかった。

「貴方は、1度 愛した人を、独占したいと言う欲望が、強過ぎるんです。佑美さんが亡くなって、耐えられなくなった貴方は、翔織に会って、寂しさを紛らわせようと した。違いますか?」

私の言葉に、祐貴さんは答えない。

「人は物じゃないんです。ちゃんと意思が在る。翔織が貴方から独立して生きたいと思うなら、手を離さなきゃ駄目です。翔織を愛しているのなら。」

「うるせェ!!知ったような口を利くな!!」

祐貴さんは突然、私に殴り掛かって来た。

「!!」

運動が苦手な私は避けられる筈も無く、お腹を思いっ切り殴られて、その場に踞った。

「てめェ!!」

翔織が、今迄 聞いた事が無いような低い声で怒鳴り、祐貴さんの胸ぐらを掴んだ。

「解るぜ!解るぜ、翔織!お前、そいつが好きなんだな!!」

祐貴さんの言葉に、翔織は はっと顔を強張らせた。

「なら俺が壊してやるよ!俺が佑美を失った苦しみを、お前にも味あわせてやる!!」

祐貴さんは狂ったように笑うと、翔織の顔に頭突きを喰らわせた。

「がっ……。」

翔織が祐貴さんの胸ぐらから手を離し、よろよろと後退る。

額を押さえた手の間から、血が滴った。

……駄目。

2人を止めなきゃ。

2人共、苦しんでるんだから……。

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