闇
相手チームの人なんて、邪魔にならないかのように、椎名君は華麗に走って行く。
そして、そのままシュートを決めてしまった。
笑顔で走り寄った曽根倉君と、相変わらず無表情でハイタッチを交わす椎名君を見ながら、私の横に座っていた葵ちゃんが、ぽつりと呟いた。
「あいつ等、運動神経めっちゃ良いんだ……。」
その言葉に、私と舞ちゃんは頷く。
明るいけれど、いつも女の子と つるんでる、小柄な曽根倉君。
いつもヘッドホンで音楽を聴いていて、日焼けなんて した事 無いみたいに白い肌を した椎名君。
2人共、草食系にしか見えなかったのに。
今、グランドは、2人だけの聖域みたい。
ボールに触っているのは、常に曽根倉君か椎名君。
私も、あの2人みたいに運動が出来たら良いのになぁなんて、思ってしまう。
今日のクラスマッチで、きっとクラスの女子達は、私の事を、人付き合いも出来ない、運動も出来ない、とろい奴だと思ったんだろう。
でも、そんなのは、どうだって良い。
私は、ただただ、椎名君を見続ける。
このクラスマッチが、全ての始まりだった。
もし私が、自分の思いに従って、クラスマッチを休んでいて、貴方を見なかったら。
もし貴方が、曽根倉君の言葉なんて気にせずに、クラスマッチを休んでいたら。
こんなに辛く、苦しい想いを する事も、無かったのかな?
私は。