溺愛トレード
「私、いつかはお父様が決めた相手と結婚するってわかっていたけど。瀧澤さんは、私と同じ世界の人よ。
私ね…………このままじゃ、文ちゃんのことを本当に理解できないまま結婚して一生を終えることになる」
「別に、無理して理解なんてしてもらわなくても…………」
実乃璃の瞳が、じっと私を見つめてくる。
本気モードの実乃璃だ。
「だから、彼氏をトレードしない?」
「はあぁぁぁ???」
徹平は、真っ白なソースと魚を盛大に弧を描いてリバースさせた。
「結婚といっても、お父様は六ヶ月なら待ってくれるっておっしゃるの。だから私考えたの。徹平くんと付き合えば、文ちゃんみたいになれるんじゃないかって。
でもね、私が徹平くんと付き合ったら文ちゃんが寂しいでしょ? だから、瀧澤さんを差し出すわ」
「ちょっと、待ってよ……」
長年友達をしてきたけど、今回はまた最大級にハチャメチャな要求をしてきた。
「決まりね。そうしましょう。徹平くんもそれでいいでしょ? 私、今日からあなたの彼女よ」
「え……実乃璃ちゃんが、俺の彼女?」
嫌と言え、徹平。
「ははは……悪くないかなぁ」