溺愛トレード

「でもね、私。いっつも、プンちゃんに選ばれたその一つが羨ましかった」


「もう、わかったから……とりあえずプンちゃんは今すぐやめてみようか?」
 

「だからね。徹平くんも、その一つだと思うのよ。私ね、瀧澤さんのことはすごくいいんだけど後悔しそうでコワい」


「あのね……この前と主旨が違くないですか? 実乃璃さん」


「プンちゃんが選んで大事にしている徹平くんが羨ましいの! 羨ましいのにわからない!

 こんなうさぎ小屋みたいな小汚い部屋に住んでいるし、同じ服ばかり着てるし、一カ月かけてお父様の分給(時給の分バージョン。一分間に稼ぐ給料)しか稼げない男のどこがいいんだか全然わかんないですものっ!」


 徹平のまん丸の瞳に涙がたまる。そりゃそうだ。今、彼は存在自体を全否定されてしまったのだから。

 私は、ムツゴロウさんみたいな寛大な心を持って、両手を広げると徹平を抱きしめて「よぅし、よーし、よしよし」と彼の頭をガシガシと撫でた。


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