溺愛トレード
だけど、このトレードの本当の意味を知らない私は瀧澤さんの書いた文字を見て息を飲む。
『会いたいよ、実乃璃』
「え…………これだけでいいんですか?」
惚けたふりをしてみても、これだけ熱い想いが詰まった手紙はないんじゃないかと動揺した。
「これだけだよ」
瀧澤さんは、便箋を綺麗に三つ折りに畳んで封筒にいれると封をした。
「頼んだよ、乃亜。実乃璃に、渡してくれ」
「…………は、はい」
薄っぺらい封筒を受け取ると、その手首を捕まえられて、私は瀧澤さんに抱き寄せられた。
「もしも、実乃璃がその手紙に返事をくれないなら……」
聞きたくない……聞きたくないのに、瀧澤さんの声は私の耳元で囁かれて脳に直接、ダイレクトに語りかけてくる。
「このトレードは終わらせるつもりはないよ」
それって、どういう意味?