溺愛トレード
私たちはお互いにビールジョッキを掴む。
うわ……瀧澤さんにビールジョッキ似合わないな…………
だけど、そんなことお構いなしに瀧澤さんは「乾杯」と言ってからジョッキをがちんと豪快にぶつけてきた。
きんきんに冷えたビールを喉に流し込むと、「はあ」と自然なため息が零れた。
「お疲れ様、今日は急に大役をお願いしたから疲れただろう?」
「あ、いえ。でも緊張しちゃって、途中から何を話しているか訳がわかんなくなりました」
定例会議は、ずらりと並んだいかにも偉そうなおじ様たちを前に粛々と行われた。
何を話そうか事前に決めていたのに、あんなに大勢の人の前で話すことが久しぶりすぎて頭の中は真っ白になった。
「フォローありがとうございます」
瀧澤さんは、いえいえ、と頭を下げて笑っていたけど、瀧澤さんがフォローしてくれなかったら、偉そうなおじ様たちを前にアン・カイエに悪い印象を与えてしまっていたかもしれない。
結局、瀧澤さんは一人でおじ様たちを納得させて商品を増やしたことの承認と理解を得てしまったのだ。