溺愛トレード
「いりませんし、行きません! 私は自分の仕事をしただけですから……少し頼りなかったかもしれませんが、次からは頑張ります。
それにダイヤもルビーも靴もバッグもインテリアも旅行も、私は興味ないですから。
瀧澤さんが付き合ってきた女の子たちはそういう事に興味があったのかもしれませんし、実乃璃もそういうのが大好きですけど、私は違います。ダイヤもらうなら、ここで十回ビール飲んでお好み焼きをお腹いっぱい食べて、部屋でゴロゴロしてる方が好きなんです」
なおちゃんが「あんた馬鹿ね。大馬鹿ね!」と叫びながら海鮮お好み焼きの具を、どんと置いた。
どんぶりに入っている海鮮お好み焼きの具は、いつもだったら小粒のホタテが二つに冷凍のイカとエビしか入っていないのに、今日は函館で食べてきたような大粒のホタテが五つにに艶々のイカとエビが入ってでてきた。
なおちゃん、かなり露骨な商売してるじゃん……
じとっとなおちゃんを睨みつけている間に、瀧澤さんはそのどんぶりを私から取り上げた。
「あ……ちょっと、瀧澤さん。私がやりますよ」
「大丈夫。僕が焼く」
カウンター席の小さめの鉄板に薄く油を伸ばして、菜箸で丁寧に具を混ぜ始めた瀧澤さん。
「お好み焼きなんて焼けないと思ってるだろ? 僕はお好み焼きも、たこ焼きも大好きだよ」