溺愛トレード
「それだけじゃないの。育ちも良くて、頭も良くて、顔も、性格も、洋服の趣味もパーフェクト。完璧なのよ!
完璧な理想の王子様が白馬にまたがって、目の前にやってきた。しかも、お父様の御墨付き」
「はいはい、じゃ結婚しちゃえばいいじゃん」
実乃璃は、切ないモードを解除して、今度は恋する乙女モードで、視線は斜め四十五度上に上がり、頬杖をついて甘い甘いため息をつく。
「瀧澤さんていうんだけどね……瀧澤さんも私のことを気に入ってくださったようで、私みたいに美人で賢くて聡明で美しくてキラキラしちゃってて眩いばかりのオーラをまとっている聖女みたいな女ははじめてだって言うの」
「本当にそんなこと言ったの?」
「それでね。私たち、結婚を前提にお付き合いすることにしようと思っているの」
「そう、おめでとう。実乃璃、それ食べないならちょうだい」
空になったお皿と入れ替わりで、焼いた魚に白いソースがかかった料理が出てきた。前菜に手をつけていない実乃璃の前には、料理が二つ並んだ。
「でもね……」
「うん、だから何が不安なの? はっきりして」
「私、あの人と結婚したら一生この世界から抜け出せない」