溺愛トレード
本当は、疲れたし、ビール飲んでいい気分だし、自分の部屋でゴロゴロしながらテレビでも見ていたいんだけど…………
瀧澤さんの様子を見ていると無理をしているんじゃないかと心配になってきたので、はやく手紙を渡してあげることにした。
実乃璃の友だちにならなかったら一生縁がなかっただろう絢爛豪華なダンスホールを横切る。普通なら、私たち庶民は立ち入ることさえ許されない場所だ。
お酒を浴びるほど飲んでへろへろになってる金持ちをかき分けて、プールサイドにやってきた。
「実乃璃っ!」
実乃璃を見つけ出すのは、とても簡単だ。人集りの中心に必ず奴はいる。実乃璃はセレブの中でも、特にセレブだから物珍しさに人が集まってくるんだ。
「あらぁ! プー子ちゃん、今日も絶好調にプンプンしてるわ」
「してるよ! こっちは実乃璃のせいではた迷惑なことばかりに巻き込まれてるんだからっ!」
実乃璃は群がる金持ちたちを「ちょっと待ってて」といったん待機命令を出すと、カクテルドレスの裾を翻して、ピンヒールを鳴らして歩いてくる。
私の前にやってきたと思ったら、くるんと方向転換して徹平の首に両腕をからめる。
「会いたかったわ、徹平くん」
「………………お、俺も」
「徹平っ!!!!」
おい、こらぁ!
徹平は、その場に流されすぎなんだってば!