溺愛トレード
「実乃璃。瀧澤さんは絶対に大丈夫だよ。選んで後悔はしない。私が責任持つ。それに、瀧澤さんお好み焼きやけるんだよ? わかる? お好み焼き」
実乃璃は、レターセットに視線を落としたまま「わかんない……」と呟いた。
「瀧澤さんは、たしかに実乃璃と同じで、生まれながらにお金持ち世界で生きてきた人だけど。それなりに社会の色んなこと知ってるんだよ。実乃璃より遥かにね」
お好み焼きをやいてくれた瀧澤さんは、少しだけ普通に見えた。
もちろん、人並み外れた美貌の持ち主であることは変わりないけど、ああいう場所での立ち振る舞いもきちんとわきまえてるとこが好感度もアップさせた。
「ごめんね、実乃璃。私も正直結婚とか言われると貯金もないし、住む場所とか、子どものこととかめんどくさいなぁ、とか考えちゃうけどさ。実乃璃は、そういう心配しなくていいんだし、大丈夫だよ」
この大丈夫は、投げやりに放つ大丈夫とは訳が違う。
私が補償してあげる。だから、大丈夫だよ。と誠心誠意込めた大丈夫だ。
「乃亜ちゃん……」
「ん? なに?」
「私も会いたい……」
「実乃璃っ! やっぱり、好きなんでしょ? 瀧澤さんのことが!」
「…………うん、でも自信ない」
本当の実乃璃は、引っ込み思案で素直な女の子だ。
いつから、実乃璃は変わってしまったんだっけ?
「自信なんてなくていいんだよ。瀧澤さんも実乃璃が好きだから」
「そうかなぁ?」
「そうだよ! でも、こんなとこで男侍らせて遊んでるのはよくないかもね」
実乃璃は魂が抜けてしまったようにコクンと頷いた。