溺愛トレード
────「実乃璃に、乃亜ちゃんって呼ばれたの三年ぶりかも」
「あはは、俺はサルベージちゃんて呼ばれてた時の乃亜が一番ウケたけどね」
「もうやめてよ!」
「なんでサルベージちゃんになったんだっけ?」
「覚えてない!」
外国人女性のどぎつい口紅がついた徹平のほっぺを濡れたハンカチで、ゴシゴシと強めに拭いた。
「イタタタっ……怒るなよ、プー子ちゃん。プンプン怒ってばかりいると可愛くないよ」
「うっさい!」
公園の水道でハンカチを洗う。
ああ、この真っ赤な口紅落ちるかなぁ?
徹平は呑気にベンチに座りながら「全部おちたぁ?」なんていいながら、首元を気にしてる。
濡れたハンカチで拭った顔や首元、はだけたシャツに外れかかったネクタイを首からぶら下げて徹平は夢見心地で私の手を引いた。
「でもさ、やっぱ乃亜すごいよ。あの実乃璃ちゃんを改心させちゃうんだから」
引力に従って、徹平の隣に引き寄せられる。
「改心したかどうかは不明だし、それに瀧澤さんからの手紙が嬉しかっただけたよ」
「でも俺は乃亜のおかげだと思うよ」