溺愛トレード

 実乃璃は正真正銘の世間知らずのお嬢様だけど、自分が一般人とはかけ離れた生活を送っているという自覚はある。

 他人に対して全く無頓着なのかというと、そうではなくて、むしろ自分の興味がわいた時には凄まじい執念でこちらに心を寄せてくる。


 前に徹平が大好きなパチンコに興味を持った時も大変だった。


 新台が入荷するから朝から並ぶ、という徹平についていき、行列の最後尾で「こんな無駄なことに時間は使えないわ。私は、パチンコがしたいの。もう嫌。店ごと買っちゃえばいいじゃない」とお父様に電話して店ごと買ってしまった。


 私が駆けつけた時には、実乃璃はがらんとした店内で、一人黙々とパチンコ台に玉を投入し続けていた。


「もう、十五時間ぶっ通しなんだけど……俺、仕事あるしバトンタッチして…………」という徹平からのSOSで事態を把握した。



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