君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を





………
………………
………………………



“本当は思い出したくないのに
 ………悲しくなるから………
 本当は抱き締めていたいのに
 ………苦しくなるほど………
 キミを殺してしまいたいのさ
 ………そして僕も死ぬ………
 狂おしいくらいにキミが居る
 僕の中から、消えてくれない


 キミが好きでワケが解らない
 ………どうしてこんな………
 全身をバラバラにされた様な
 こんな痛みをキミは与える?
 キミは僕がそんなに嫌いか?
 それとも僕の被害妄想なの?


 一体キミはどうして欲しいの”




………………………
………………
………



「んー……。 なんか、すいません」

「なんで謝るのさ」


僕の寝室兼仕事部屋にあるパソコンデスクの椅子にチョコンと体操座りをして、出来たばかりの新曲を聴き終えた彼女である。 ベッドに腰掛けてそれを見ていた僕に振り返ると、申し訳なさそうに頭を軽く下げた。


「私のせいで、こんな悩んだ歌詞になったんですよね?」

「……まあ、君には沢山困惑させられたからね」


態と物憂げに深い溜め息を吐き、腕を組んで見せた。
「あうー」普段の彼女からは想像出来ない、悲しさがよく解る顔をして椅子から立ち上がると、僕の隣に座った。 そして両腕を広げて


「だっこしてあげるから許して下さい」


思わず苦笑した。 なにそれ、天然なの? ネタなの?

どうやら彼女は本気で言ったらしく、僕が笑った事に不満そうな顔をした。


「なんで笑うのー、―――――っひゃ!?」


僕が勢いよく抱き付くと、彼女の体は呆気なくベッドに倒れ込んだ。 「………驚いた」呟く小さな唇に、自分の唇を重ねる。


「んっ………ぅ」


彼女は反応しやすい体質なのか、僕の舌が彼女のそれに触れて動く度、くぐもった声を艶めかしく漏らした。


ただキスしているだけである。 誓って身体をまさぐってはいないし、服も脱がしていない。
キスしているだけなのだが、腕の中で小さな身体が舌を絡める度にビクンと跳ねるのはどうしてだろうか。 彼女は腰を浮かせ、自らの太もも同士をこすりあわせ、ベッドのシーツをギュッと掴んでいた。

やがて彼女の声が一層高くなり、暫く腰を痙攣させたのでまさかと思って唇を離すと、案の定涙目でグッタリとしていた。
あらまあ、なんてこと。


「何、お前………もしかして」

「ダメ。 言わないで」

「………イったの?」

「言わないでってばぁぁ………!」



.
< 101 / 114 >

この作品をシェア

pagetop