君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を
「…………あっ!」
ギターを拾い上げ、ケースに入れてしっかりと留め金を付けて立ち上がろうとした少女が、こちらを見て動きを止めた。
僕も動きを止めた。 といっても、元から動いちゃいなかったが。
暗い商店街の中で、少女と僕は見つめ合った。
僕が立って居る場所は、少女の場所からじゃよく見えないだろう。
しかし少女の目は、しっかりと僕を見ていた。
「―――――っ」
少女が口を開きそうになったのに気付き、僕はすぐさま背を向けて歩き出した。 行くあては無いが、歩き回れば時間はつぶせるだろうと思った。
………
………………
………………………
はて?
今、あそこに立っていた人間はあの人だろうか。 いつもカフェの奥の席で眠ってる、あの男性。
ここ数日は姿を見掛けなかったが、仕事が忙しかったのだろうか?
そもそも何の仕事をしてるんだ?
「つぐみちゃーん」
「あ、はーい」
少し彼の事が気になったが、クッキーに勝る程ではなかった。
。