君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を
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翌日、一晩眠っても昨日のショックと怒りが消えなくてイライラしたので、部屋中の大掃除をしようと思った。
しかし無駄に広い家なので掃除機を掛けるのが億劫になる。 だからそれは最近購入した“お掃除ロボット”に任せることにした。 私がやったのは収納スペースの整理だ。
要るものと要らないものを分け、場所を決めて綺麗に納めていく。 イライラしたら掃除に限る。
それが済んだら、次はキッチンを掃除――――しようと思ったが、あまり汚れてなかった。
考えてみれば窓も床も綺麗だし、浴室も綺麗だ。
あまり掃除する所がなかった。
「…………」
私の足にぶつかってきた“お掃除ロボット”を踏んづけた。 壊れるかも知れないと思いながらも、蹴飛ばした。 それでも動いてる。 頑丈なやつだな。
あの三万円はもちろん返すつもりだ。 しかし、あんな事があった後にまたノコノコとやってくるだろうか、“彼”―――いや、もう相楽でいいやバカらしい。
そして、あともう一つ、驚いた事があった。
オジサンが相楽の父親、という事である。
びっくりした。
だって普通、自分の息子が芸能人になったら、親という生き物は真っ先にそれを自慢すると思ってた。 店もやってるならやはり、サインとか、写真とか飾ったりするとも。
しかしオジサンは違った。 どうしてかは知らないが、息子が誇らしいというよりは、寧ろ負い目があるようにも見えた。
無意識に踏みつけにしていた“お掃除ロボット”から足を上げて、リビングの隣の部屋に向かった。
そこはいわゆる書斎というもので、天井すれすれまである高さの本棚が壁のほとんどを占めている。 唯一の窓に向き合う形で設置した机は、メタリックなデザインのものだ。
本棚には大量の本が収まっている。
久々に本の整理をしようかと思ったが、一瞬で萎えた。 そんなエネルギーは、収納スペースの整理でほとんど消耗した。 本の量が多いし。
本棚にある本は、基本的には小説ばかりだ。 漫画もあるが、全体の四分の一くらい。
私はその中から二冊、本を取り出した。
それは背表紙に「○○高校図書館」とある本であり、その高校は昔私が通っていた高校だ。
借りたままで、ずっと忘れていた。 間違いなく返却日を大幅に過ぎている。
あの高校の図書館は文字通りの“図書館”である。 つまりは一般解放されているわけで、施設の一角にある校舎への入り口で、ちょっとした書類を書いて持ち物検査をすれば、簡単に校舎の中へ入れる。
別に自分で行ってもいいと思うのだが、私のやった過去の事件は函南くん曰わく「伝説になってる」らしい。 仮に行ったとして、あの頃の事を知ってる人間と会ってしまえば、きっと変な目で見られて、私は壮絶に、壮っっっ絶に、気分を害してしまうだろう。
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