君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を
「まあ、色々あってね」
「何事? ――――授業中に吉永がぶすくれた顔して戻って来たけど、それと関係あんの?」
「「あいつの話はすんな」」
“吉永”に反応した私と舞洲は、声を揃えて函南くんに言った。 多少、責めるような口振りだったかも知れない。
何も知らない函南くんは、何故自分がそんな風に言われたのか解らないまま、「……すいません」怯えた子犬のように俯いた。 可愛い、癒される。
「…………うち、教室戻るわ」
「うん」
「二度とアイツはイジメないから安心して。
――――っていうか関わりたくない」
ケッ、と嫌そうに顔をしかめながら立ち上がり、さっさとその場から消える舞洲。 片手には「こころ」を持ったままだ。 多分借りるのだろう。 ――――何だかんだ言ってたクセにハマってんじゃん。
「……まあ、何というか、…………うちのカレンダーに“仲良き事は良き事かな”って格言が書いてあったぞ」
「なるほど?」
「仲良き事は良き事かな」
「かな?」
「――――かな?」
顔を合わせて首を傾げ合う。
「函南くんは可愛いな」
「君のが可愛いです」
「照れますなあ」
右手を差し出すと、函南くんの左手がそれを握った。 男の子らしいゴツゴツした感触を、手のひらで感じる。
「何処に行こうか」
「猫カフェ」
「…………猫カフェ?」
「うん」
「何故猫カフェ?」
「何故かしらねえ……。 フィーリング? なんだか、猫の毛皮のモフモフをひたすら味わいたいの」
「フィーリングかあ」
「フィーリングだねえ」
。