君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を




「ギター? 弾けるの?」

「弾けません」

「じゃあどうすんの」

「んー。 でもなんか、適当に押さえて弾いてみたら意外と上手いこといったんですよね。 自分で作った歌に合わせられるし、別にこのまま習わなくてもいいかなって」


鍋から茹で上がったパスタを出して、水気を切るオジサン。 顔はこちらに向けてポカーンとしている。


「何ですか?」

「いや、…………なんか強がってる感じでもないし、本気で言ってんだなあと思って。 ―――あらまあ、天才見つけちゃったぞ俺」

「天才、なんですかねぇ?」

「まあ、それが本当なら才能はあると思うよ。 良いことじゃん。 上達したら聴かせてよ」

「えー……? やだなぁ……………」

「その時はタダでケーキ食べ放題にしてあげる」

「仕方ないなあ。 今度ギター持ってきますからね」










まあ、別にケーキが食べたいだけじゃないけれども、私はギターの練習を頑張った。 三日目でやっとパソコンの電源を入れてネットで弾き方を調べ、コードの押さえ方なんかも調べてコピーして練習した。 驚いたことに、適当に押さえていた頃のそれのほとんどがギターコードとして載っていた。 偶然何だろうが、少しテンション上がった。


数週間して私は誕生日を迎えて18歳になり、作っていた曲が完成した。




誕生日の翌日、夜の12時にギターケースを背負ってあのカフェに向かった。


「いらっしゃいませー、つぐみちゃん」

「こんばんはー」


店内はやっぱり人気がなくて、やっぱり奥のテーブルであの男性が寝ていた。


「おー、それがギター? どれどれ、見せてごらんなさいよ」


ウキウキと言いながら、オジサンはカウンターから出てきた。 背から下ろしたケースをオジサンに手渡し、私はカウンターの椅子に座った。 その隣に座ったオジサンはケースを開くと、「おわーっ」と感嘆なのか何なのかよく解らない声を出しながら中身を取り出した。


「かっけー」

「一番高くて一番綺麗な音が出るギターを下さいって言ったんです」

「でしょうねぇ。 弾いてもいい?」

「どうぞ」



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