君に愛の歌を、僕に自虐の歌詞を
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独りきりでスタジオに入ると、毎回酷く孤独になる。 余計な音を悉く消してしまう防音室故か、静寂が鼓膜を突き破りそうな程の威力を以て僕を襲う。 こんな所で、独りぼっちで歌わなきゃいけないのが悲しく感じる時もある。 でも壁の硝子越しには人が沢山居るのが見えるし、ドアを開けて外に出れば、独りぼっちの世界から抜け出せると解っている。 独りぼっちなのはここに居る時だけだと。
でも、何時まで経っても慣れない。 自分の耳を聾するかのようなこの静寂が、目に見えない分余計恐ろしくなる。
「――――っ! ――――――――!」
歌っているはずなのに、ヘッドホンのせいで自分の声が聞こえない。 妙な恐怖と唄に込めた感情が皮肉にも、今日は絶妙に融合され、胸に食い込んだ。
心はひたすらカサついていた。
頭には昨日の光景が張り付いていた。
歌いながら、涙が出そうになった。 唄が良いと思ったからの涙ではなく、渇望している存在が手に入らないが故の悲しみ、故の涙が、ジワジワと滲み出て視界を曇らせるが、零れる寸前でグッと堪えた。
“つぐみちゃん”は何故あの時、ファミレスで向かい側に座るあの少年ではなく僕を見つめていたんだろう。
何故昨日、僕ではなくあの少年が“つぐみちゃん”を抱き締めてキスしていたんだろう。
何故、僕じゃないんだろう。
悔しいけれど、諦めてもいた。
僕なんか、好きになるわけがない。 だって恋人が居るし。
略奪なんてできる程の度胸もないし、多分この先僕が彼女に求めている展開は有り得ないのだ。
「あああああああッッ!」
力一杯叫んだ。 叫び終わったタイミングを見計らったように、曲も終わった。
自分の内臓が一つくらい、叫んだ拍子に口から零れたんじゃなかろうか。 それ位に胸が痛んだ。
苦しい。
苦しい。
思いの丈を全て綴った筈の唄を、全身全霊で歌いきった筈なのに、心は虚ろなままだった。 全然スッキリしなかった。
「グッジョブ!」
静寂の主から逃れるように、部屋から出ると鹿島に抱きつかれた。 コイツは毎回抱き付いてくる。 なんなんだ暑苦しい。
そんな鹿島の鼻の穴に、手近にあった鉛筆の尻の方(さすがに尖った方は危ないと思った)をプスリと刺して撃退すると、いわゆるミキシングルームにあるソファに寝転んだ。
「死んだ」
「生きてんじゃん」
吐き捨てた僕の額に人差し指でツンツンしながら、大山はツナマヨのおにぎりを食っている。 一口で半分近く食った。 大口だな。
「とにかく僕は死んだ…………。 真っ白に燃え尽きた」
「ジョーかお前は」
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